【大学入試数学】2025年 一橋大 後期 大問1【整数】

こんにちは。今回は一橋大の2025後期大問1についてみていきます。

問題

(1) 整数 \(a\) , \(b\) , \(c\) が \(a^2+b^2=c^2\) を満たすとき、\(ab\) は \(4\) の倍数であることを示せ。

(2) 3辺の長さがすべて整数で、そのうち1辺の長さが \(2025\) である直角三角形の面積は \(162\) の倍数であることを示せ。

※本記事では(1)の整数の部分を正の整数と解釈しております。(\(a=0,b=c\) 等も与式を満たすが、このとき \(ab=0\) は4の倍数とならないため)

考え方

いわゆる「ピタゴラス数」に関する証明問題です。本問はゴールから逆算して要領よく情報を拾っていかないと泥沼に嵌ります。「ゴールから逆算」を意識して考察を進めることが肝です。なお、本問は(1)の方が(2)より難度が高いので、(1)が無理そうなら(2)から先に手を付けるのもアリです。

(1)

まずはゴールを設定します。(1)で求められていることは「\(ab\) が4の倍数」の証明であり、これは「①\(a\) ,\(b\) がともに偶数 または ② \(a\) ,\(b\) のうち一方が4の倍数」に同値なため、①②のいずれか一方が満たされることを示す流れになります。

上記を念頭に、(a,b)の偶奇の組み合わせを考えてみます。(a,b)の偶奇は、(奇奇)(偶偶)(偶奇)(奇偶)の4パターンが考えられますが、aとbは対称なので(偶奇)(奇偶)はどちらか一方だけ考えればよく、(偶偶)は上記①そのものであることから考察不要です。従って、(a,b)=(奇奇)(偶奇)の2パターンだけ考えれば十分です。さらに、「abが4の倍数」という結果から逆算すると、(a,b)=(奇奇)はあり得ない \(\Rightarrow\) (a,b)の少なくとも一方は偶数であることが予想されるので、実質的には(a,b)=(偶奇)の1パターンのみ考察すればよさそうです。

以上の考察を踏まえ、下記2項目の証明を(1)のゴールに設定します。

(I)\( \space (a,b)\) の少なくとも一方は偶数である。 (II) \(\space (a,b)\)=(偶,奇)のとき、\(a\) が4の倍数になる。

まずは(I)の証明方法を考えてみます。与式 \(a^2+b^2=c^2\) を眺めると、\([整数]^2\) で表される平方数のみ登場していることがわかります。このことから、(a,b)より(\(a^2\),\(b^2\))をベースに考える方が見通しがよさそうな感じです。 これを踏まえ、(I)は、

(I) (a,b)の少なくとも一方は偶数 \(\Leftrightarrow\) (\(a^2,b^2\)) のうち一方は4で割り切れる

と言い換えて示す方針にします。「4で割りきれる」の証明なので、使う道具は\(\mod4\) 一択です。

自然数 \(c\) を4で割った余りは0,1,2,3の4通りが考えられ、各々 \(c^2\) を4で割った余りは0,1,4(≡0),9(≡1)になります。 \(\mod4\) を用いて表現すると、

$$c^2 \equiv \begin{cases} 0 & (c\equiv 0,2)\\1 & (c\equiv 1,3) \end{cases} \pmod4$$

といった感じになります。なんだか複雑な見た目をしていますが、要は「\([偶数]^2\) を4で割った余りは0、 \([奇数]^2\) を4で割った余りは1」という至極当然の事実を数式で表現しているだけです。

この、「平方数を4で割った余りは0か1」は整数問題で超頻出なので押さえておくとよいでしょう。これとセットで「平方数を3で割った余りは0か1」も要チェックです。こっちは(2)で使います。

同様のことが \(a^2\) と \(b^2\) にも適用できるので、与式より

$$(a^2,b^2,c^2) \equiv(0,0,0),(0,1,1),(1,0,1),(1,1,2) \pmod4$$

の4通りに絞ることができますが、最後の(1,1,2)は明らかに不適であるため、実現し得る組み合わせは

$$(a^2,b^2)\equiv (0,0),(0,1),(1,0) \pmod4$$

の3通りに絞られ、3パターンとも(a,b)に偶数が1つ以上含まれているため、「(a,b)の少なくとも一方は偶数」が示されます。以上を記述すれば(I)はクリアです。

なお、(I)の証明は上述のやり方でも行けますが、(a,b)=(奇奇)を仮定して矛盾を示す背理法の方が少しだけ省エネできます。答案例は背理法の方を採用しました。

本題は(II)です。コレの証明が本問の最難関です。

(a,b)=(偶奇)のとき、与式よりcが奇数であることはすぐにわかります。与式を、

$$a^2=c^2-b^2=(c-b)(c+b)$$

と変形すると、a^2=(偶数)×(偶数)の形で表せます。この形をヒントに考察を進めます。

ここで重要になるのが、本項冒頭で言及した「ゴールから逆算」の考え方です。

目指すべきゴールは「aが4の倍数」であり、これは「\(a^2\) が2で4回割り切れる」と同値です。コレを上式を踏まえた表現にすると、「(c-b)(c+b)が2で4回割り切れる」となり、このためには「(c-b)と(c+b)の少なくとも一方は4で割り切れる」ことが必要です。このことから、「(c-b)と(c+b)のどちらか一方は4の倍数になっているはず!!」と発想できれば光明が見えてきます。

ここで少しだけ発想が飛躍しますが、(c-b)と(c+b)の差を4で割った余りについて考えてみます。こいつらの差は \(2b\) であり、\(b\) が奇数であることを思い出せば、\(2b\) を4で割った余りが2となることが導かれます。すなわち、

$$(c+b)-(c-b)=2b \equiv 2 \pmod4$$

$$\Rightarrow c+b \equiv c-b+2 \pmod4$$

がいえ、こいつら2匹が偶数であることは既に割れているので、4で割った余りの組み合わせは

$$\Rightarrow (c-b,c+b) \equiv (0,2),(2,0) \pmod4$$

の2通りに絞られ、目的の「(c-b)と(c+b)の少なくとも一方は4で割り切れる」が示されました。

ここまで来れば後は流れ作業です。(c-b)と(c+b)のうち一方は4で割り切れ、他方は偶数なので、積(c-b)(c+b)は8で割り切れます。従って、

$$a^2=(c-b)(c+b)\equiv 0 \pmod8$$

となり、\(a^2\) が2を3個以上約数にもつため、\(a\) が2を2個以上約数にもつことが導かれます。以上で(II)も証明完了です。

(2)

(1)と同様に、まずはゴールを設定します。(2)で示すべき内容は「面積が162の倍数である」です。直角三角形の斜辺を \(c\), 他の2辺を \(a\), \(b\) とすれば、面積は \(\frac{1}{2}ab\)で表せるので、示すべき内容は、

$$\frac{1}{2}ab\space が\space 162=2\times 81\space の倍数となる\Leftrightarrow ab\space が\space 4\times 81\space の倍数となる$$

と言い換えられます。 \(ab\) が4の倍数となることは(1)で示せているので、\(ab\space\) が 81の倍数を示すことが本問のゴールになります。コレを念頭に答案を作っていきます。

題意の直角三角形は「① \(c\) =2025」「②\(a,b\) の一方が2025」 の2パターンが考えられますが、②の場合は \(2025=25 \times 81\) であることから \(ab\) は81を約数にもつため検討不要です。従って①のパターンについて検討することになります。①のとき、

$$a^2+b^2=2025^2=5^4\times 3^8$$

が成立し、\(a^2+b^2\) は3で8回も割り切れることがわかります。コレをヒントに考察を進めます。

ここで、示すべきゴールを「abが81の倍数」\(\Leftrightarrow\)「abが3で4回以上割れる」と言い換えると、\(\mod3\) を活用する方針が立つかと思います。

ここで、(1)の考察で言及した「平方数を3で割った余りは0か1」を使います。自然数 \(a\) に対して、

$$a^2 \equiv \begin{cases} 0 & (a \equiv 0)\\1 & (a \equiv 1,2) \end{cases} \pmod3$$

であり、同様のことが \(b\) に対しても言えます。このことと、\(a^2+b^2\) が3の倍数であることを併せれば、

$$a^2 \equiv b^2 \equiv 0 \Rightarrow a \equiv b \equiv 0 \pmod3 $$

が示せるので、\(\frac{a}{3}\) , \(\frac{b}{3}\) がそれぞれ自然数であることがわかります。このことから、

$$a^2+b^2=2025^2=5^4\times 3^8 \Leftrightarrow (\frac{a}{3})^2+(\frac{b}{3})^2=5^4 \times 3^6$$

$$\Rightarrow (\frac{a}{3})^2 \equiv (\frac{b}{3})^2 \equiv 0 \pmod3$$

$$\Rightarrow \frac{a}{3} \equiv \frac{b}{3} \equiv 0 \pmod3$$

$$\Rightarrow a \equiv b \equiv 0 \pmod9$$

$$ab \equiv 0 \pmod{81}$$

が導かれます。

答案例

(1)

$$a^2+b^2=c^2 \tag{1}$$

\(a\), \(b\) がともに奇数であると仮定する。このとき、

$$a \equiv \pm 1, b \equiv \pm 1\Rightarrow a^2 \equiv b^2 \equiv 1 \pmod 4$$

であるため、(1)式より \(c^2 \equiv 2 \pmod 4\) ゆえ \(c\) は偶数となるが、このとき

$$c \equiv 0,2 \Rightarrow c^2 \equiv 0 \pmod 4$$

となり矛盾する。よって、背理法より \(a\), \(b\) のうち少なくとも一方は偶数である。

(I) \(a\) が偶数かつ \(b\) が奇数のとき、(1)式より \(c\) は奇数である。

(1)式より

$$a^2=(c-b)(c+b) $$

と変形できる。ここで、\(c-b\) と \(c+b\) はともに偶数であり、\(b\) が奇数であることから

$$(c+b)-(c-b)=2b \equiv 2 \pmod4$$

$$\Rightarrow c+b \equiv c-b+2 \pmod4$$

$$\Rightarrow (c-b,c+b)\equiv (0,2)\space または \space (2,0) \pmod 4$$

$$\Rightarrow a^2 =(c-b)(c+b) \equiv 0 \pmod 8$$

$$\Rightarrow a \equiv 0 \pmod 4$$

となる。従って、積 \(ab\) は4の倍数となる。

(II) \(b\) が偶数かつ \(a\) が奇数のとき、(I)と同様の手順で\(ab\) が4の倍数であることが示せる。

(III) \(a\) , \(b\) がともに偶数のとき、\(ab\) は4の倍数となる。

以上(I)~(III)より、\(ab\) は4の倍数である。(終)

(2)

題意の直角三角形Aの斜辺の長さを \(c\) , 他の2辺の長さを \(a\) , \(b\) とすると、面積は \(\frac{1}{2}ab\) で表せる。このとき、

$$Aの面積が162の倍数\Leftrightarrow ab\space が\space 2\times 162 =4\times 81\space の倍数$$

と同値変形でき、(1)より \(ab\) は4の倍数であることから、\(ab\) が81の倍数であることが示せれば題意は満たされる。

(I) \(a\) , \(b\) のうち一方が2025であるとき、2025=4×81であるため、 \(ab\) は81を約数に含む。

(II) \(c=2025\) のとき、

$$a^2+b^2=2025^2\equiv 0 \pmod3 \tag{2}$$

ここで、自然数 \(m\) に対し、

$$m^2 \equiv \begin{cases} 0 & (m \equiv 0)\\1 & (m\equiv \pm 1)\end{cases} \pmod3$$

であるため、(2)式より、

$$a^2\equiv b^2 \equiv 0 \pmod3 $$

$$\Rightarrow a \equiv b \equiv 0 \pmod3$$

がいえる。従って、自然数 \(p\) , \(q\) を用いて

$$a=3p \space , b=3q$$

と表すことができ、このとき(2)式より

$$9p^2+9q^2=2025^2$$

$$\Rightarrow p^2+q^2 = 2025 \times 25 \equiv 0 \pmod3 $$

$$\Rightarrow p^2\equiv q^2\equiv 0 \pmod3$$

$$\Rightarrow p\equiv q\equiv 0 \pmod3$$

$$\Rightarrow a\equiv b\equiv 0 \pmod9$$

$$\Rightarrow ab \equiv 0 \pmod{81}.$$

ゆえ、\(ab\) は81で割り切れる。

以上(I)(II)より題意は示された。(終)

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