【大学入試数学】2007年 京都大 前期 理系 大問6 【微分・積分】

問題

すべての実数で定義された何回でも微分できる関数 \(f(x)\) が \(f(0)=0,f'(0)=1\) を満たし、さらに任意の実数 \(a,b\) に対して \(1+f(a)f(b)\neq 0\) であって

$$f(a+b)=\frac{f(a)+f(b)}{1+f(a)f(b)}$$

を満たしている。

(1) 任意の実数 \(a\) に対して、 \(-1<f(a)<1\) であることを証明せよ。

(2) \(y=f(x)\) のグラフは \(x>0\) で上に凸であることを証明せよ。

答案例

$$f(a+b)=\frac{f(a)+f(b)}{1+f(a)f(b)} \tag{1}$$

$$1+f(a)f(b)\neq 0 \tag{2}$$

$$f(0)=0 ,\space f'(0)=1 \tag{3}$$

(1)

式(1)で \(a=x,b=-x\) とすると、

$$f(0)=\frac{f(x)+f(-x)}{1+f(x)f(-x)} \tag{4}$$

となるので、式(3)(4)より

$$f(x)+f(-x)=0\Rightarrow f(-x)=-f(x) \tag{5}$$

を得る。式(2)で \(a=x,b=-x\) とすると

$$1+f(x)f(-x)\neq 0 \tag{6}$$

となるので、式(5)(6)より

$$1-f(x)^2\neq 0\Leftrightarrow f(x)^2\neq 1$$

$$\Leftrightarrow f(x)\neq \pm 1 \tag{7}$$

が任意の実数 \(x\) で成立する。式(1)で \(a=b=\frac{x}{2}\) を代入すると

$$f(x)=\frac{2f\left(\frac{x}{2}\right)}{1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2} \tag{8}$$

となるので、

$$式(8)\Rightarrow 1+f(x)=\frac{1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2+2f\left(\frac{x}{2}\right)}{1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2}=\frac{\left(1+f\left(\frac{x}{2}\right)\right)^2}{1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2}>0 \space (∵\space 式(7))$$

$$∴\space f(x)>-1 \tag{9}$$

が任意の実数 \(x\) で成立する。同様に

$$式(8)\Rightarrow 1-f(x)=\frac{1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2-2f\left(\frac{x}{2}\right)}{1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2}=\frac{\left(1-\left(\frac{x}{2}\right)\right)^2}{1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2}>0 \space (∵\space 式(7))$$

$$∴\space f(x)<1 \tag{10}$$

である。よって、式(9)(10)より、

$$-1<f(a)<1$$

が任意の実数 \(a\) で成立する。(終)

(2)

式(1)より \(a\neq 0\) のとき

$$f(a+b)-f(b)=\frac{f(a)+f(b)-f(b)-f(a)f(b)^2}{1+f(a)f(b)}=\frac{f(a)(1-f(b)^2)}{1+f(a)f(b)}$$

$$\Rightarrow \frac{f(a+b)-f(b)}{a}=\frac{f(a)}{a}\frac{1-f(b)^2}{1+f(a)f(b)} \tag{11}$$

が成立するので、式(11)で \(a\to 0\) の極限をとれば

$$f'(b)=\lim_{a\to 0}\frac{f(a+b)-f(b)}{a}=\lim_{a\to 0}\frac{f(a)}{a}\frac{1-f(b)^2}{1+f(a)f(b)} \tag{12}$$

となる。ここで、

$$f'(0)=\lim_{a\to 0}\frac{f(0+a)-f(0)}{a}$$

$$\Rightarrow \lim_{a\to 0}\frac{f(a)}{a}=1 \space (∵\space 式(3)) \tag{13}$$

なので、式(12)(13)より

$$f'(b)=1\cdot \frac{1-f(b)^2}{1+f(0)f(b)}$$

$$∴\space f'(x)=1-f(x)^2 \tag{14}$$

であるので、式(14)両辺を \(x\) で微分すれば

$$f”(x)=-2f(x)f'(x) \tag{15}$$

を得る。

問(1)の結果から

$$f'(x)=1-f(x)^2>0 \tag{16}$$

が成立するため、 \(f(x)\) は増加関数である。従って \(x>0\) において

$$f(x)>f(0)=0 \tag{17}$$

が成立する。よって、式(15)(16)(17)より、 \(x>0\) では

$$f”(x)<0$$

が成立するため、この定義域において \(f(x)\) は上に凸である。(終)

解説

関数方程式の難問です。この問題では、示すべきゴールから逆算して答案をデザインする構成力を問うています。古き良き京大数学って感じの良問です。

(1)

不等式の証明問題です。証明すべき不等式は任意の実数 \(a\) に対する \(-1<f(a)<1\) ですが、この類の不等式は2本に分けて証明するのが鉄則です。困難は分割せよです。

$$-1<f(a)<1\Leftrightarrow \begin{cases} 1+f(a)>0\\かつ\\1-f(a)>0 \end{cases}$$

\(1+f(a)>0\) と \(1-f(a)>0\) をそれぞれ示していきます。まずは前者について、与式から \(1+f(a+b)\) の形をつくってみます。

$$1+f(a+b)=1+\frac{f(a)+f(b)}{1+f(a)f(b)}=\frac{1+f(a)f(b)+f(a)+f(b)}{1+f(a)f(b)}$$

分子はキレイに因数分解できる形になっているので、

$$1+f(a+b)=\frac{1+f(a)f(b)+f(a)+f(b)}{1+f(a)f(b)}=\frac{(1+f(a))(1+f(b))}{1+f(a)f(b)}$$

\(1+f(x)>0\) の形を目指し、上式に \(a=b=\frac{x}{2}\) を代入すると

$$1+f(x)=\frac{\left(1+f\left(\frac{x}{2}\right)\right)^2}{1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2}$$

が得られます。分母は \(f\left(\frac{x}{2}\right)^2\ge 0\) であることから \(1+f\left(\frac{x}{2}\right)^2>0\) 、分子は \(0\) 以上なので、

$$1+f(x)\ge 0$$

となります。同様の手順で

$$1-f(x)\ge 0$$

が示せるので、得られた2式から

$$-1\le f(x)\le 1$$

が得られます。示すべき不等式 \(-1<f(a)<1\) にだいぶ近いところまで辿り着きました。あとは、

$$f(x)\neq \pm 1\Leftrightarrow f(x)^2\neq 1\Leftrightarrow f(x)^2-1\neq 0$$

が示せればよさそうです。これを示すにあたり、問題文で与えられた \(1+f(a)f(b)\neq 0\) に注目してみます。これと目的の \(1-f(x)f(x)\neq 0\) を見比べて、 \(f(x)=-f(-x)\) なのでは?と発想できれば勝ちです。与式 \(f(a+b)=\frac{f(a)+f(b)}{1+f(a)f(b)}\) に \(b=-a\) を代入すると

$$f(a-a)=f(0)=\frac{f(a)+f(-a)}{1+f(a)f(-a)}$$

となり、 \(f(0)=0\) なので

$$f(a)+f(-a)=0\Leftrightarrow f(-a)=-f(a)$$

がつねに成立します。このことから、

$$1+f(a)f(b)\neq 0\Rightarrow 1+f(x)f(-x)\neq 0$$

$$\Rightarrow 1-f(x)f(x)\neq 0\Rightarrow f(x)\neq \pm 1$$

が得られます。以上より、

$$\begin{cases} -1\le f(x)\le 1\\かつ\\f(x)\neq \pm 1 \end{cases}\Leftrightarrow -1<f(x)<1$$

が全ての実数 \(x\) で成立するため、題意が示されます。

(2)

「 \(y=f(x)\) は \(x>0\) で上に凸」の証明です。「上に凸」の定義は

$$f(x)が上に凸である\Leftrightarrow f”(x)\le 0$$

というものでした。よって、本問は \(x>0\) で \(f”(x)\le 0\) が成立することを示すことがゴールになります。二次導関数の情報を得るためには、言うまでもなく一次導関数の情報が必要なので、 \(f(x)\) を微分する必要があります。

\(f(x)\) が二次関数とか三角関数とか、具体的な表式のある関数なら粛々と計算すればいいんですが、本問のような具体的な表式が不明な抽象関数の場合は直接計算することができません。なので、今回は微分の定義式に立ち戻る必要があります。

導関数 \(f'(x)\) の定義は平均変化率のゼロ極限として下式で与えられるんでした。

$$f'(x)=\lim_{h\to 0}\frac{f'(x+h)-f(x)}{h}$$

この式の形を目指して与式を変形していきます。与式では \(f(a+b)\) という \(f(x+h)\) と同じ形が登場しているので、そのまんま活用しましょう。

$$f(a+b)-f(b)=\frac{f(a)+f(b)}{1+f(a)f(b)}-f(b)=\frac{f(a)+f(b)-f(b)-f(a)f(b)^2}{1+f(a)f(b)}$$

$$=\frac{f(a)(1-f(b)^2)}{1+f(a)f(b)}$$

\(a\neq 0\) として両辺を \(a\) で割ると

$$\frac{f(a+b)-f(b)}{a}=\frac{f(a)}{a}\frac{1-f(b)^2}{1+f(a)f(b)} \space (a\neq 0)$$

となり、あとは \(a\to 0\) の極限をとれば導関数 \(f'(b)\) となります。

$$f'(b)=\lim_{a\to 0}\frac{f(a+b)-f(b)}{a}=\lim_{a\to 0}\frac{f(a)}{a}\frac{1-f(b)^2}{1+f(a)f(b)}$$

最右端の極限を求めます。極限を求めるときは、まず初めに不定形のチェックをしましょう。最右端は \(\frac{f(a)}{a}\) と \(\frac{1-f(b)^2}{1+f(a)f(b)}\) の掛け算であり、後者の極限は

$$\lim_{a\to 0}\frac{1-f(b)^2}{1+f(a)f(b)}=\frac{1-f(b)^2}{1+f(0)f(b)}=\frac{1-f(b)^2}{1+0\times f(b)}=1-f(b)^2$$

と計算できるので不定形ではありません。一方 \(\frac{f(a)}{a}\) の方は、 \(f(0)=0\) なので \(\frac{f(a)}{a}\to \frac{0}{0}\) で不定形になります。この不定形ですが、問題文で与えられた \(f'(0)=1\) という情報がヒントになりそうです。この微分係数も微分の定義式にブチ込むと

$$f'(0)=\lim_{a\to 0}\frac{f(0+a)-f(0)}{a}=\lim_{a\to 0}\frac{f(a)}{a}=1$$

となるので、目的の不定形が解消できます。よって、導関数は

$$f'(b)=\lim_{a\to 0}\frac{f(a)}{a}\frac{1-f(b)^2}{1+f(a)f(b)}=1\times \frac{1-f(b)^2}{1+0\times f(b)}=1-f(b)^2$$

となります。変数は \(b\to x\) にすり替えておきましょう。

$$f'(x)=1-f(x)^2$$

\(f'(x)\) が求まったので、両辺 \(x\) で微分すれば二次導関数が得られます。

$$f”(x)=\frac{d}{dx}(1-f(x)^2)=-2f(x)f'(x)$$

示したいゴールは \(f”(x)=-2f(x)f'(x)<0\) なので、 \(f(x)\) と \(f'(x)\) の符号を調べます。

まず \(f'(x)\) については、問(1)の結果から \(f(x)^2<1\) なので

$$f'(x)=1-f(x)^2>0$$

が得られます。次に \(f(x)\) について、 \(f(x)\) は \(f'(x)>0\) より増加関数なので \(x>0\) で \(f(0)=0\) より大きい値をとり続けます。よって、

$$f(x)>f(0)=0 \space (x>0)$$

以上より、 \(f(x)f'(x)>0\) が \(x>0\) で成立するため、

$$f”(x)=-2f(x)f'(x)<0 \space (x>0)$$

が成立します。従って \(f(x)\) は \(x>0\) で上に凸です。

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