【入試数学解説】2023 北大前期理系 問4(確率)

こんにちは。ブログ投稿練習として、大学入試数学の解説記事を挙げます。

問題

\(n\)を2以上の自然数とする。1個のさいころを\(n\)回投げて出た目を順に\(a_1,a_2,…a_n\)とし、

$$K_n = |1 – a_1| + |a_1 – a_2| + … + |a_{n-1} – a_n| + |a_n – 6|$$

とおく。また \(K_n\) のとりうる値の最小値を \(q_n\) とする。

  1. \(K_3 = 5\) となる確率を求めよ。
  2. \(q_n\)を求めよ。また、 \(K_n = q_n \)となるための \(a_1,a_2,…a_n\)に関する必要十分条件を求めよ。
  3. \(n\)を4以上の自然数とする。\(L_n = K_n + |a_4 – 4| \)とおき、\(L_n\) のとりうる値の最小値を\(r_n\)とする。\(L_n = r_n\)となる確率\(p_n \)を求めよ。

解説

(1) \(K_3 = 5\) となる確率を求めよ。

考え方

まずは問題設定を整理します。\(a_1,a_2,…a_n\) はサイコロの出目なので、それぞれ1~6の整数値をランダムにとります。これら\(n\) 個の変数によって定まる値 \(K_n\) についてあれこれ考察していく、という趣旨の問題のようです。

与式を眺めてみると、右辺の第1項の|1-a_1|と末項の|a_n-6|は無条件で絶対値が外せることに気が付きます。

$$K_n = (a_1 – 1) + |a_1 – a_2| + … + |a_{n-1} – a_n| + (6 – a_n) $$

$$⇒ K_n = 5 + a_1 – a_n + \sum_{k=1}^{n-1} |a_k – a_{k+1}| \tag{1}$$

\( K_3 =5 \) の場合について聞かれているので、\(n = 3\) を代入すると、

$$K_3 = 5 + a_1 – a_3 + |a_1 – a_2| + |a_2 – a_3| = 5 $$

$$⇒ a_1 – a_3 + |a_1 – a_2| + |a_2 – a_3| = 0 \tag{2}$$

この式が成立するような\((a_1,a_2,a_3)\)の組を考えるわけですが、絶対値が2か所あるため、愚直に絶対値を外す方針だと4回も場合分けするハメになります。正攻法では計算地獄に陥るのは明らかなので、もう少しスマートに解けないか検討してみます。

式(4)を眺めてみると、\(|a_1-a_2|\),\(|a_2-a_3|\)は\(a_k\) が隣どおしで差をとっているのに対し、\(a_1-a_3\)は初項 \(a_1\) と末項 \(a_3\) の差をとっており、中間の\(a_2\) だけ仲間外れの恰好になっています。このままだと気持ち悪いので、ためしに \(a_1-a_3\) の隙間に\(a_2\) を差し込んでみます。

$$ a_1 – a_3 = (a_1 – a_2) + (a_2 – a_3) $$

こうすると、絶対値で括られた\(|a_1-a_2|,|a_2-a_3| \)との関係もみえてきます。(2)式は、

$$(a_1 – a_2) + |a_1 – a_2| + (a_2 – a_3) +|a_2 – a_3| = 0 \tag{3}$$

と変形でき、\(b_n = (a_n – a_{n+1}) + |a_n – a_{n+1}|\) とおくと、(3)式は

$$b_1 + b_2 = 0 \tag{4}$$

とシンプルな形に置き換えることができます。

この大問は \(b_n\) の存在に気づけたか否かが全てです。

\(b_n\)に気づかないと誇張抜きで作業量が3倍になる地獄の大問です。

さらに、\(b_n\) について、

$$b_n = \begin{cases} 2(a_n – a_{n+1})&\text{($a_n > a_{n+1}$のとき)}\\ 0 &\text{($a_n ≦ a_{n+1}$のとき)}\end{cases} \tag{5}$$

がいえ、\(b_n\)はつねに0以上の値をとることがわかります。従って、

$$(4) ⇔ b_1 = b_2 = 0 ⇔ a_1 ≦ a_2 かつ a_2 ≦ a_3 ⇔ a_1 ≦ a_2 ≦ a_3 \tag{6}$$

と同値変形できるので、(6)右端の不等式を満たす \((a_1,a_2,a_3)\) を数え上げればよいことになります。

答案例

\(a_k (k = 1,2,…,n)\) は1以上6以下の整数値をとるので、与式第1項と末項の絶対値は外すことができ、

$$K_n = (a_1 – 1) + |a_1 – a_2| + … + |a_{n-1} – a_n| + (6 – a_n) $$

$$⇒ K_n = 5 + a_1 – a_n + \sum_{k=1}^{n-1} |a_k – a_{k+1}| \tag{1}$$

と変形することができる。(1)式で\(n = 3 , K_n = 5\) とすると、

$$5 = 5 + a_1 – a_3 + |a_1 – a_2| + |a_2 – a_3|$$

$$⇔ a_1 – a_3 + |a_1 – a_2| + |a_2 – a_3| = 0 \tag{2}$$

と変形される。式(2)が成立する確率を求める。

式(2)は

$$(a_1 – a_2) + |a_1 – a_2| + (a_2 – a_3) +|a_2 – a_3| = 0 \tag{3}$$

と変形でき、これに対し数列 {\(b_k\)} \( (k = 1,2,…,n-1)\) を

$$b_n = (a_n – a_{n+1}) + |a_n – a_{n+1}|= \begin{cases} 2(a_n – a_{n+1})&\text{($a_n > a_{n+1}$のとき)}\\ 0 &\text{($a_n ≦ a_{n+1}$のとき)}\end{cases} \tag{4}$$

と設定すると、(3)式は、

$$b_1 + b_2 = 0 \tag{5}$$

と表現でき、(4)式よりつねに \(b_k ≧ 0 \) であることから、

$$(5) ⇔ b_1 = b_2 = 0 ⇔ a_1 ≦ a_2 かつ a_2 ≦ a_3 ⇔ a_1 ≦ a_2 ≦ a_3 \tag{6}$$

と同値変形できる。(6)式右端を満たす \((a_1,a_2,a_3)\) の総数は、

\(a_1 = 6 \) のとき、\((a_2,a_3) = (6,6) ⇒\) 1通り

\(a_1 = 5 \) のとき、\((a_2,a_3) = (5,5~6),(6,6) ⇒\) 2+1=3通り

\(a_1 = 4 \) のとき、\((a_2,a_3) = (4,4~6),(5,5~6),(6,6) ⇒\) 3+2+1=6通り

\(a_1 = 3 \) のとき、\((a_2,a_3) = (3,3~6),(4,4~6),(5,5~6),(6,6) ⇒\) 4+3+2+1=10通り

\(a_1 = 2 \) のとき、\((a_2,a_3) = (2,2~6),(3,3~6),(4,4~6),(5,5~6),(6,6) ⇒\) 5+4+3+2+1=15通り

\(a_1 = 1 \) のとき、\((a_2,a_3) = (1,1~6),(2,2~6),(3,3~6),(4,4~6),(5,5~6),(6,6) ⇒\) 6+5+4+3+2+1=21通り

より、1+3+6+10+15+21=56通り

\((a_1,a_2,a_3)\) の出方の総数は\(6^3 = 216 \) 通りなので、求める確率は、

$$\frac{56}{216} = \frac{7}{27} …(答)$$

<別解>

(6)式の数え上げは\(a_1,a_2,a_3\)の3個の項と6-1=5個の仕切り線を横一列に並べる並べ方の総数(重複組み合わせ)を数えればよいので、

$${}_8 \mathrm{C}_3 = 56$$

とスムーズに求めることができます。

(2) \(q_n\)を求めよ。また、 \(K_n = q_n \)となるための \(a_1,a_2,…a_n\)に関する必要十分条件を求めよ。

考え方

(1)の考察を一般化します。式(1)は、

$$⇒ K_n = 5 + (a_1 – a_2) + (a_2 – a_3) + … + (a_{n-1} – a_n) + \sum_{k=1}^{n-1} |a_k – a_{k+1}|$$

$$⇒ K_n = 5 + \sum_{k=1}^{n-1} ((a_k – a_{k+1}) + |a_k – a_{k+1}| ) $$

$$⇒ K_n = 5 + \sum_{k=1}^{n-1} b_k \tag{7}$$

と変形でき、\(b_k ≧ 0\)なので、\(K_n\) の最小値は5であることがわかり、\(K_n = 5\) となるのは\(b_k = 0\) \((k = 1,2,…,n)\) の場合であるとわかります。

答案例

(1)式より、

$$⇒ K_n = 5 + (a_1 – a_2) + (a_2 – a_3) + … + (a_{n-1} – a_n) + \sum_{k=1}^{n-1} |a_k – a_{k+1}|$$

$$⇒ K_n = 5 + \sum_{k=1}^{n-1} ((a_k – a_{k+1}) + |a_k – a_{k+1}| ) $$

$$⇒ K_n = 5 + \sum_{k=1}^{n-1} b_k ≧ 5 \tag{7}$$

と変形でき、(7)式右端の等号は、\(b_1=b_2=…=b_{n-1}=0\) で成立する。従って、

$$ q_n = 5 …(答)$$

であり、

$$K_n = q_n ⇔ b_1=b_2=…=b_{n-1} ⇔ a_1 ≦ a_2 ≦…≦ a_n …(答)$$

(3) \(n\)を4以上の自然数とする。\(L_n = K_n + |a_4 – 4| \)とおき、\(L_n\) のとりうる値の最小値を\(r_n\)とする。\(L_n = r_n\)となる確率\(p_n \)を求めよ。

考え方

(3)は重複組み合わせです。球と仕切りの並べ方を数えるアレです。この手の計算に習熟していればアッサリ解けるご褒美問題ですが、慣れてなければ泥沼確定なので(2)で切り上げるのもアリだと思います。

重複組み合わせとか円順列とか数珠順列とか条件付確率とかの、忘れた頃にやってくる連中は折に触れて復習しておくのが大切だと思いました。

答案例

\(K_n ≧ 5\) であるため、

$$L_n = K_n + |a_4 – 4| ≧ 5 + 0$$

より、

$$r_n = 5 …(答)$$

である。

(I) \(n ≧ 5\)のとき、

$$L_n = 5 ⇔ K_n = 5 かつ a_4 = 4 $$

$$⇔ \begin{cases} 1 ≦ a_1 ≦ a_2 ≦ a_3 ≦ 4 &\tag{8} \\ a_4 = 4 \\ 4 ≦ a_5 ≦…≦ a_n \end{cases}$$

\( 1 ≦ a_1 ≦ a_2 ≦ a_3 ≦ 4\) となる\((a_1,a_2,a_3)\) の個数は、\(a_1~a_3\) の3つの項と4-1=3本の仕切り線を横一列に並べる並べ方の総数に等しいので、総数は

$$ {}_6 \mathrm{C}_3 = 20 \tag{9}$$

であり、\(4 ≦ a_5 ≦…≦ a_n\) となる組み合わせの総数は、\(a_5~a_n\) のn-4個の項と6-4=2本の仕切り線を横一列に並べる並べ方の総数に等しいので、この総数は

$${}_{n-2} \mathrm{C}_2 = \frac{(n-2)(n-3)}{2}$$

と表せる。\(a_4 = 4\) となるのは1通りであり、\(a_1~a_n\) の出目の出方の総数は\(6^n\) 通りであるため、求める確率は、

$$20 \times 1 \times \frac{(n-2)(n-3)}{2 \times 6^n} = \frac{10(n-2)(n-3)}{6^n}…(答)$$

(II) \(n = 4\) のとき、

$$L_n = 5 ⇔ K_n = 5 かつ a_4 = 4 $$

$$⇔ \begin{cases} 1 ≦ a_1 ≦ a_2 ≦ a_3 ≦ 4 \\ a_4 = 4 \end{cases}$$

であるので、求める確率は

$$\frac{20 \times 1}{6^4} = \frac{5}{324}$$

これは(I)の結果に含まれる。

以上より、求める確率は、

$$p_n = \frac{10(n-2)(n-3)}{6^n}   (n ≧ 4)…(答)$$

おわりに

(2)の式変形は、いわゆる「和の中抜け」の逆の操作に対応します。

\(\sum{}\frac{1}{k(k+1)}\)のタイプの和を求めるとき、部分分数分解してΣの中身を書き下すと、初項と真っ向以外はきれいに相殺されて、最終的に\(1-\frac{1}{n}\) だけ残る、みたいな計算を一度はやったことがあるかと思います。

本問の場合は逆で、\(K_n\) 式中にある\(a_1-a_n\) という塊からΣを復元するという操作を行いました。試験本番でコレに気づくのはかなり厳しいと思います。

難しい問題でした。

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